塚めぐり 序
日本では古くから山岳信仰が盛んでした。富士山や御嶽山といった霊山で修行することで不老長寿の力や死後の安寧を山に求めたのです。
しかし難行苦行の霊峰登山はだれでも気軽に行えるものではありません。そのため各地に富士山や御嶽山などのミニチュアを造って、お年寄りや体の不自由な人でも身近にその霊力にあやかることができるようにしたのです。それが富士塚や御嶽塚なのです。
私は山岳信仰をもつものではありません。しかしいくつかの塚を見ていると心惹かれるものがあることに気づきます。
小さな空間に濃縮された山岳信仰の世界観は、日本人の自然観を絶妙に配置した盆栽や箱庭に通じる芸術観を感じさせるものがあります。
お山の力を信じる人びとの信仰の姿は、遺跡に歴史上の人物が活躍する姿を重ねあわせてみるようなロマンさせ感じさせるものがあります。
名古屋を中心とする尾張・三河地方にも民間信仰の象徴となる数多くの塚が存在します。シリーズ立ててこれらの塚をめぐっていきたいと思います。